about・ぶんの前身ブログです。こちらが本店、あちらが支店のつもりです。(笑)


by bp2004

5 『峠』 (真壁 仁)より

峠は決定をしいるところだ。

峠には訣別のためのあかるい憂愁が
 
ながれている。



岐路をのぼりつめたものは

のしかかってくる天碧に身をさらし

やがてそれを背にする

風景はそこで綴じあっているが

ひとつをうしなうことなしに

別個の風景にはいってゆけない

大きな喪失にたえてのみ

あたらしい世界がひらける。

峠にたつとき

すぎ来し道はなつかしく

ひらけくるみちはたのしい。

みちはこたえない。

みちはかぎりなくさそうばかりだ。

峠のうえの空はあこがれのようにあまい。

たとえ行手がきまっていても

ひとはそこで

ひとつの世界にわかれねばならぬ

そのおもいをうずめるため

たびびとはゆっくり小便をしたり

摘みくさをしたり

たばこをくゆらしたりして

見えるかぎりの風景を眼におさめる。
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by bp2004 | 2005-03-27 08:32 | 暇の果実