about・ぶんの前身ブログです。こちらが本店、あちらが支店のつもりです。(笑)


by bp2004

星野道夫さんの本より

アラスカをこよなく愛し、アラスカの写真を撮り続けて、まるで殉死のような形で亡くなった写真家、星野道夫さんの書いた本『アラスカ・風のような物語』(小学館文庫)には、素敵な写真と共に、彼の素敵な文がたくさん載っています。



厳しい大自然の中で、どこまでも透明で、どこまでも峻厳で、どこまでも汚れのない、澄みきった美しい世界を、写真と文で余す所なく伝えています。私の大好きな本の一つで、たくさんの友人に紹介した箇所をここでも紹介したくなりました。これは「早春」という章の中の最後の部分です。

枯れ枝を集めながら、夕暮れのトウヒの森を歩く。湿った大気が、ゆるく、暖かい。森のカーペットに落ちているムースの糞に、少し水気が混じってきた。ヤナギの新芽が出始めたのだろう。アカリスの鳴き声があちこちから聞こえてくる。森も少しずつ動きだした。小さな焚き火が揺れている。パチパチパチパチ、僕の気持ちをほぐしてくれる。熱いコーヒーをすすれば、もう何もいらない。
   
やっぱりおかしいね。人間の気持ちって。どうしようもなく些細な日常に左右されてゆくけど、新しい山靴や、春の気配で、こんなにも豊かになれるのだから。人の心は深く、そして不思議なほど浅い。きっと、その浅さで、人は生きてゆける。
   
夜になり、星が出た。ランタンに火をともし、日記をつける。今年もまた始まった

   
厳しい大自然、その中で生き抜く素朴な人々との交流、そういう一切の虚飾を拒絶する世界の中で生き抜いた人だからこそ、辿り着けた言葉ー 人の心は深く、そして不思議なほど浅い。きっと、その浅さで、人は生きてゆける ーそうだよね、そうだよね、人の心ってそうだよねと思いながら、いつもすごく深い救いを感じてしまう一行です。すごく癒される写真、文に出会えるお勧めの本です。
   
 
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by bp2004 | 2005-03-30 11:47 | 暇の果実