about・ぶんの前身ブログです。こちらが本店、あちらが支店のつもりです。(笑)


by bp2004

2 『ローラ、叫んでごらん』

大分前にベストセラーになり、今は文庫にもなっている本なので、読まれた方も多いかと思うが、まだの方は是非読んでもらいたいと思うので、ここでお勧め。

私自身、ベストセラーになっていた時は、「フライパンで焼かれた少女の物語」という副題の衝撃性が凄くて、怖くて読めなかった。文庫(講談社+α文庫)になってから、やっと読んだ。そして、その本の素晴しさに感動してしまった。



これは1歳の時、文字どおり灼熱のフライパンで焼かれて、身体の半分以上黒焦げにされる程のひどい虐待を両親から受けた少女の、奇蹟の復活の物語である。本当の話であるという所が凄い。

生まれた時からのひどい虐待。ついにフライパンで焼くという程の異常行為で警官が現場に踏み込んで助けられた。ひどい外傷をあちこちに負って、虐待の傷跡の治療の為に何度も手術をしたそうだが、そういう身体の傷よりも、心の傷が底知れなく深かった。

一切の感覚がないように、話しかけても全くの無表情。感情というものが全く見られない。泣く事すらない。まさに生きる屍。聞こえているのかどうかも分からない。一切の反応が無い。知能レベルもすごく低いように見える。一切、関心を示さない。とにかく、全く無反応。人間でありながら、人間でない。そこに居ながら、存在していない。そういう子供だった。そういう状態で12歳まで、誰の手も届かない、極限の孤独の闇の中で、叫ぶことすら出来ずにずっと生きて来た少女だった。

そこから救い出す人々の愛のドキュメンタリーである。修道院のシスター達が中心になる。でも、この子をその闇から、直接救い出す事が出来たのは、この著者の精神科医である。そう書くと、いかにもヒューマニズム溢れる医師のようだけど、実はそういうシスターに飛行機で隣り合わせて、強引に訪ねて行く事を約束させられ、引き受けるつもりもなかったのに、その大変な子を引き受けることになるという、ただの断わり下手の人。

その大変さやシスター達の善意からの強引さに辟易とする、愚痴もたっぷりの、上昇指向の強い普通の人なのだ。何で自分がという感じで、いまいましさたっぷりに始めていく。最初の一年以上は、ただただ無反応なローラと全く進展も見られないのに付き合って行く。展望も全く見えない、逃げたい、そういう気持ちと闘いながら、結局、実に6年もの付き合いをする。

普通の人である所がまた素敵だ。それを隠そうともしない所も。むしろ野心的で、そんな大変なだけの無償の仕事など引き受けたくもなかった彼が、断わり切れなかった裏には、彼自身の過去があり、そして、そこから彼が救われたもう一つの愛の物語もある。

ともかく、そのローラの無反応なことと言ったら、驚く程で、生きる屍というのがぴったり。そこから、本当に気の遠くなるような根気、それを支える愛が起こす奇蹟の物語。

人間て何て切なく悲しいものなんだろう。人間て何て愛が必要な生き物なんだろう。愛の力って何て大きいのだろう。そして人間が愛に応える存在である事は何て素晴しいのだろうと、身体の芯から突き上げてくる程の感動を与えてくれる本だ。是非読んで欲しい。
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by bp2004 | 2005-04-03 01:41 | 暇の果実