about・ぶんの前身ブログです。こちらが本店、あちらが支店のつもりです。(笑)


by bp2004

中学生の詩のご紹介

二つとも読売新聞の作文コンクールで1994年に入賞したものです。それぞれに心を打たれて、切り抜きを取ってあります。どちらもいつも胸が一杯になって、年のせいでやたらに涙もろくなった私は泣いてしまうのですが、、。

     『くらげの苦悩』 
  
  (新潟大学教育学部付属長岡中学校3年 五十嵐 葵)

わたしの家庭は崩壊した。
まるで沈みゆく船のように。
今までの平和な生活も、
親がいて 兄姉がいて 犬のジョンがいる
机があって 家具がある 単純なことも。
表面的にはいつもと同じように。
父や母を話題にする。
名簿には父の名がある。
でも 心の中は 荒波の中で
自分の意志で動けないくらげのようだった

電話の母の気がねしたようなその声に
つい辛辣になってしまう
涙声に変わる母の言葉が
わたしの中で
ぐるぐる回る。

かすかに秋風が吹き始めた。
私の気持ちに関係なく移り変わる季節。

なにもかも母や家族の故(せい)にして
目標を失ったくらげのように
ふらふら浮いている わたし。
その透明の体は
焦燥、逃避、人を許すことのできない
どろどろしたものまでを
見透かされてしまう。
海の中では
透明さを駆使してチクリとさす
ひきょうなくらげみたいだ
陸にあがれば
何もできない小心なくらげみたいだ。
だけど
私は母を許したい。
まず許す事から始めたい。
そしてなりたい。
逃げもしない。
妥協もしない。
自分の力で突き進む
勇気ある人間に。


       『夕焼け』

  (静岡県富士市立中学2年 飯塚 礼乃(あやの))

部屋に入った私に
おばあちゃんがお湯呑を指さします
私は 夕焼けの中で
お茶を入れます
その音だけが響きます
かすかな湯気が立ちのぼります
おばあちゃんは夕焼けを見ています

ご飯をこぼすし
おもらしもする
人の名と顔も一致しない
おばあちゃん
部屋の中でも
ベッドに横になる時も
ゆっくり ゆっくり
手とひざを使って歩く
おばあちゃん

でも
何でも自分でやろうと
毎日 精一杯を続けている
おばあちゃん

おばあちゃんとお茶を飲みます
ゆっくり ゆっくり 飲みます

大きな 大きな 夕焼けです。
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by bp2004 | 2005-05-13 00:23 | 暇の果実